エンディングノートに書くべき内容—絶対書くべき5項目と書き方のコツ

📋 この記事でわかること

エンディングノートには何を書けばいいの?「全部書こうとして挫折」を防ぐための、編集統括が500件の取材から導いた優先順位と書き方のコツをまとめました。家族の手続き負担を半減させる「絶対書くべき5項目」と、書く時間を持つことの真の意味を解説します。

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エンディングノートとは何か

エンディングノートは、自分の情報・希望・想いを家族に伝えるためのノート。法的拘束力はありませんが、亡くなった後の家族の負担を大幅に減らす最強の備忘録です。
市販のエンディングノートは500〜3,000円。書店で簡単に手に入ります。手書きで自由に書ける形式が主流で、書き直しもいつでも可能。法的書類のような形式的な制約がない、柔軟な記録ツールです。

エンディングノートの3つの役割

役割1:家族への情報伝達

「父の銀行口座はどこ?」「年金記録は?」「契約していたサブスクは?」——家族が困る情報を一元化。

役割2:本人の希望伝達

葬儀・お墓・医療・介護の希望を文字で残す。家族が「父は何を望んでいたか」を知る手がかり。

役割3:人生の振り返り

書く過程で自分の人生を振り返る豊かな時間。「私はこういう人生を歩んできた」を文字にする活動。

絶対書くべき5項目

項目1:連絡先一覧

家族・親族・友人・知人・職場・サブスク・保険・銀行——連絡が必要な相手を全てリスト化。氏名、電話、住所、関係、連絡優先度。
これだけで家族の調査時間が大幅に削減されます。「父の友人に連絡したいけど、誰に?」を防げます。

項目2:契約サービス一覧

電気・ガス・水道・電話・インターネット・新聞・サブスク・保険・クレジットカード——契約しているサービスを全部リスト化。これがないと「半年後に解約漏れが発覚」というパターンに。

項目3:金融資産一覧

銀行口座、保険、年金、投資信託、暗号資産、不動産——全ての金融資産の所在と概要。パスワードはノートには直接書かず、別の安全な場所に保管。

項目4:葬儀・お墓の希望

葬儀の形式(家族葬一日葬直葬・自由葬)、お墓の希望(一般墓樹木葬納骨堂永代供養)。具体的な施設名がベスト、なければ方向性だけでもOK。

項目5:医療・介護の希望

延命治療を望むか、尊厳死希望か、介護方針——事前指示書(リビング・ウィル)の内容をノートにも反映。

余裕があれば書きたい5項目

項目6:遺品の処分方針

大切な品の譲り先、処分してもよい物の方針。「これは長女に」「これは捨ててもよい」とメモ。

項目7:家族へのメッセージ

家族一人ひとりへの簡単なメッセージ。長文不要、短い言葉で十分。「ありがとう」「○○を頼むね」など。

項目8:人生の振り返り

生まれた場所、育った環境、印象的な出来事——自伝のような形で自由に書く。家族にとっての「父を知る記録」になります。

項目9:呼んでほしい人リスト

葬儀に呼んでほしい友人・知人のリスト。家族が連絡先に困らないように。「父の交友関係を私が知っていて当然と思われがちですが、知らないことの方が多い」のが家族の本音。

項目10:デジタル遺品の方針

SNSアカウント、サブスク、ネット銀行——デジタル空間の遺品の処分方針。残す・追悼・削除を明記。

書く順番のおすすめ

順番 項目 所要時間
1番 連絡先一覧 2〜3時間
2番 契約サービス一覧 2〜3時間
3番 金融資産一覧 1〜2時間
4番 葬儀・お墓の希望 1時間
5番 医療・介護の希望 30分
6番以降 余裕があれば 各30分〜数時間

1番から5番までで合計7〜10時間。月に1回1〜2時間ずつ進めれば、半年で完成します。

書く時の3つのコツ

コツ1:完璧を目指さない

白紙ページが残っていても気にしない。「書ける項目だけ書く」を徹底。70%埋まれば十分。

コツ2:定期的に見直す

家族構成、契約サービス、希望が変わることもあるので、年1回(誕生日や年末)の見直しを習慣に。

コツ3:家族にありかを伝える

どんなに完璧に書いても、家族が場所を知らないと意味がない。「リビングの本棚の右端」と具体的に伝えておく。

取材で見た「ありがたかった」ノート

取材したご家族で印象に残った息子さんの言葉。「父は3年がかりで終活を進めてくれていました。葬儀社の連絡先、お墓の契約書、銀行口座一覧、友人リスト——全部一つのファイルにまとまっていて、僕は『父の指示通りに動くだけ』で済みました。だから、悲しむ時間がちゃんと取れた。父の最後の贈り物は、僕に『泣く時間』をくれたことなんです」
これこそが、エンディングノートの真の価値。家族に「泣く時間」をプレゼントできる、本当に温かい記録です。

市販エンディングノートの選び方

選び方1:項目の網羅性

上記10項目がしっかり網羅されているか確認。「コクヨ もしもの時に役立つノート」「終活カウンセラー協会監修ノート」などが定番。

選び方2:書きやすさ

余白の広さ、字の大きさ、ページ構成——実際に書きやすそうかどうか手に取って確認。

選び方3:デザイン

地味な黒・茶のものから、明るい色のものまで様々。長く付き合うノートなので、好きなデザインを。

選び方4:価格

500〜3,000円が一般的。安いから内容が悪いわけではなく、機能で選んでください。

エンディングノートで「人生」を書く

取材を重ねて感じるのは、エンディングノートは単なる事務記録ではなく、「人生の集大成」だということ。書く過程で自分の人生を振り返り、家族への想いを文字にする——これは現代の自伝のようなもの。「死を準備する」ではなく「人生を肯定する」作業として、ぜひ前向きに取り組んでみてください。

よくある質問(Q&A)

Q. エンディングノートに法的効力はありますか?

基本的にありません。財産分割の意思表示は遺言書でなければ法的に有効になりません。エンディングノートはあくまで「家族への伝達」と考えてください。

Q. パスワードは直接書いてもいい?

推奨しません。ノートの紛失や盗難で重大被害につながります。パスワード自体は別の安全な場所(金庫など)、または信頼できる第三者に預けてください。

Q. 何歳から書き始めるべき?

年齢制限はありません。40代から書き始める方も増えていますが、最も多いのは50〜60代。早ければ早いほど、ゆっくり進められます。

Q. 書いた内容を家族に見せる?

全部見せる必要はありません。「重要書類の保管場所」「葬儀の希望」など、家族が知っておくべき項目だけでも共有しておきましょう。

Q. 書き間違えたらどうする?

自由に修正・追記OK。ノートだから線を引いて消したり、新しいページに書き直したり、思いついた時に自由に。

✍️ 執筆者より:中村 千鶴

取材を通じて感じたのは、エンディングノートは「終活で最も家族に喜ばれる準備」だということです。500件以上のご家族を取材してきた経験から、「父(母)がエンディングノートを残してくれていてよかった」という声を、本当に何度も聞いてきました。

私自身、父を見送ったとき、父が事前に残してくれていたエンディングノートに、何度も救われました。葬儀の喪主を務めながら、夜中の2時にエンディングノートを開いて確認することが何度もあったのです。父は事前に契約一覧と連絡先を書き残してくれていたので、銀行口座、保険、年金、月々の支払い——どこに連絡すればいいかが一目でわかりました。あの一冊が、私の心と時間をどれほど救ってくれたか。業界に長く携わってきた身として、エンディングノートの大切さを心の底から実感した出来事でした。

業界に長く携わってきたからこそ申し上げたいのが、エンディングノートに完璧を求めないこと。「全項目埋めなくては」と思うと、白紙ページの圧力に押されて挫折します。70%でいい、書ける項目だけ書けばいい——この緩さが、長く書き続けるコツです。

取材で印象的だったある70代女性のお話。彼女は最初、エンディングノートを「重い、暗い」と感じていらしたのですが、書き始めると「自分の人生を振り返る楽しい時間」になったとのこと。古い友人の連絡先を書きながら「あの人とまた会いたい」と思い出し、実際に久しぶりに連絡を取ってランチに出かけられたそうです。「終活が、いまを楽しむきっかけになった」と笑顔で話してくださった姿が、忘れられません。

もう一つお伝えしたいのが、エンディングノートは「家族への手紙」でもある、ということ。事務的な記録だけでなく、家族一人ひとりへの短いメッセージを残すと、家族にとってのかけがえのない宝物になります。私の父も、私と弟への短いメッセージをノートに残してくれていました。「悲しみすぎないように、君たちの人生を楽しんでほしい」——あの一文が、私の心の支えになっています。

これからエンディングノートを書き始める方は、まず書店で1冊買って、リビングのテーブルに置いてみてください。眺めるだけでも、終活への扉が少し開きます。書ける項目から少しずつ。半年〜1年かけてゆっくり進めれば、家族への最高の贈り物が完成します。

あなたが書くエンディングノートが、ご家族の「泣く時間」を確保する、温かい贈り物になりますように。

中村 千鶴

編集統括 / 終活・葬送ジャーナリスト

出版社で20年以上にわたり終活・葬送分野を取材。両親の墓じまい経験をきっかけに本誌の編集統括に就任。霊園・寺院・葬儀社への取材件数は500件を超える。

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